壱岐島(33°47′ 129°43′)(海図W177)


(
概要)
壱岐水道の北側を成し、馬渡《マダラ》島の北方約7.5Mにある南北方向にやや長い島である。
この島の沿岸は出入が多く、北岸に勝本港、西岸に湯野本浦・半城湾、南岸に大島漁港・郷ノ浦港・印通寺《インドウジ》港、東岸に八幡浦・芦辺港などがある。
印通寺港は北風時、芦辺港は北西風時、小型船の避泊地になるが、湯野本浦及び半城湾には好錨地は得られない。
北岸に中瀬戸、西岸に大瀬戸及び蟐蛾《ジョウガ》ノ瀬戸がある。
島の周囲には、小島や水上岩、暗岩などが多数存在しているので諸港湾、浦等への入港・入湾又は沿岸を航行しようとする船舶は事前に十分な研究が必要である。
郷ノ浦港の西南西方の大島〜長島間は、舟艇以外は通航してはならない。

(
避険線)
北方から芦辺港に接近するためには魚釣埼(33°50.3′ 129°46.4′)を航過する際は、権現鼻(33°45.7′ 129°47.9′)と左京鼻(33°47.3′ 129°48.0′)とを結んだ一線の西側に入らないこと。
この一線は沖曽根(33°50.5′ 129°47.4′E、水深5)の東方約0.6Mの所を通る。

〜九州沿岸水路誌105から抜粋〜



勝 本 港(33°51′ 129°42′)(海図W1179)


(
概要)
壱岐島の北端にある港で、港内南岸の防波堤内を内港、それ以外を外港と呼称している。さらに内港は東方支湾(水深25)及び南方支湾(水深58)に分かれている。
港は、東側を壱岐島の最北岬、北側を名烏《ナガラス》島(高さ68)、若宮島(高さ100m、北部に灯台及び無線方位信号所がある)及び辰ノ島(高さ48)で囲まれ、北〜東寄りの風に対して遮られるので、風の影響を受けないが、西よりの風にはさらされる。

(
針路法)
港内に至る水路は、若宮島〜壱岐島間の大瀬戸及び若宮島〜名烏島間の中瀬戸の2水路があるが、大瀬戸が主水路である。

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大瀬戸を通って入港する場合は、根島(33°51.6′ 129°41.8′E、高さ7.2mの岩)075°に見て水路の中央を進む。
なお、南〜西の強風時には、うねりやいそ波が高くなって、内港へ入りこむため大角度の変針が困難になることがある。

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中瀬戸を通って入港する場合は、若宮灯台(33°52.2′ 129°41.2′)を目標として中瀬戸に接近し、勝本港第1 号導灯(33°51.8′ 129°41.4′)を利用して、水路の中央を進む。名烏島の西端を航過した後、勝本港うの瀬新防波堤灯台(33°51.4′ 129°41.6′)を船首目標にして港奥に向かう。
小型船はこの瀬戸を通航できるが、潮流が強いので初航者は避けたほうがよい。
また、中瀬戸の北方が北風によるうねりが大きいときには、大瀬戸を利用したほうがよい。
沿岸にはほとんど浅瀬が広がっており、北方諸島の北岸は少なくとも500m以上離して航行したほうがよい。

(
注意)
夜間この港に近づくときに、若宮島から沖合約5Mまでの間に漁船が群集して無数の灯火を見ることがある。

九州沿岸水路誌105から抜粋


勝本港の避難港としての適性(小型船向)
当港は壱岐島の北端にあって、北方を西から辰ノ島、若宮島、名烏島に囲まれ、港の入口を大瀬戸といい、若宮島と名烏島の間を中瀬戸という。港内は防波堤を境として、外港と内港に二分され、外港は水深618m、内港は28mで、底質は砂、または貝がらまじりの砂で「錨かき」は良い。
外港は1000トン以下の船が避泊するのに適しているが、港の入口が西に開いているため、西寄りの風が強いときは波浪がはいり避泊できない。
内港は1000トン以下の船や、小型漁船が避泊するのに適しているが、港の入口が北に開いているため、北寄りの風が強いときは中瀬戸から波浪がはいることがある。

避難港の手引き(小型船向)昭和40年から引用

 

大島漁港(33°44′ 129°38′)(海図W1179)


壱岐島南西岸の郷ノ浦港の前面にある大島南東岸、長島北岸及び原島北岸に囲まれた漁港で、大島、長島、原島にそれぞれ船だまりがあるが、大島以外は小舟艇しか入れない。
大島の船だまりは南・北両防波堤(北防波堤南端に灯台がある)により囲まれ、その北東側にある漁業組合の前面に岸壁(水深3)があり、付近の島及び郷ノ浦へのフェリーが発着する。

九州沿岸水路誌105から抜粋

大島漁港の避難港としての適性(小型船向)
当港は壱岐島の南西方にある大島の南東部にあたり、郷ノ浦港と向かい合っており、港の入口は南へ開いている。
南方に長島、原島(はるしま)があり、各方向の風をよく防ぎ、小型船(20トン以下)の避泊に適している。
底質は砂で、「錨かき」も良く、台風のときの避泊にも適している。

避難港の手引き(小型船向)昭和40年から引用

 

郷ノ浦港(33°45′ 129°41′)(海図W177, 1179)

(概要)
壱岐島の南西部にある港で、港域内の西岸には、小崎及び神田の漁港がある。
この港は、壱岐島の表玄関として古くから開けた所で、港内東岸の八幡埼〜鎌埼間から東方へ湾入する部分を内港、他の部分を外港と呼称している。

(気象)
年間を通じて北東の風が最も強く、北西の風がこれに次いでいる。
内港は台風のときには、対馬〜博多間の定期船がよく避泊する。

(錨地)
外港は諸礁を除けば水深2030mで、大・中型船も錨泊でき、南寄りの風が強吹するとき以外はおおむね安全である。特に北岸の玉埼(33°44.9′ 129°40.1′)の北東方約400m、水深25m内外の所は小型船に良い錨地である。

九州沿岸水路誌105から抜粋


郷ノ浦港の避難港としての適性(小型船向)
当港は壱岐島の南西部にあるほぼ方形の港で、港の入口は南西方に開いており、南寄りの風が強く吹くとき以外は安全である。
八幡埼と鎌埼とを結ぶ線の内を内港、外を外港とし、外港は水深30m内外で底質は砂、またはどろで「錨かき」も良く、大型船(1000トン以上)23隻錨泊できる。
内港は八幡埼の東方約350mに係留岸壁があって、長さが約80m、水深55m、800トン以下の汽船が横付けでき、台風の影響なく安全である。

避難港の手引き(小型船向)昭和40年から引用



印通寺港(33°45′ 129°46′)(海図W176, 177)

(概要)
壱岐島の南東岸にある港で、北方を陸岸に、南方を妻ヶ島(高さ25mの平らな島)により囲まれ、冬季に多い北西〜北東の季節風をよく防ぎ、港内は比較的穏やかである。
春季〜夏季に南東風や南西風が強吹するときは、港内に波浪が入る。
錨地) 妻ヶ島西方の海域は、南及び東寄りの風以外のときは錨地として利用できる。

九州沿岸水路誌105から抜粋


印通寺港の避難港としての適性(小型船向)


当港は壱岐島の南端、海豚先の北東約48kmにある妻ケ島の北方に湾入している港で、港の入口の中央には小島がある。
港の入口は南東と南西の両側に開いており、北方を陸岸に、南方を妻ケ島によって囲まれ、冬季に多い北東〜北西の季節風を良く防ぎ、港内は穏やかである。
春、夏季に南東風や南西風が強く吹くときは、波浪がはいる。
水深は3mに浚渫されており、100トン以下の船が避泊するのに適している。
底質は砂であるが、「錨かき」はあまり良くない。
台風のときの避難港としては適当でないので、郷ノ浦港へ避難するほうがよい。

避難港の手引き(小型船向)昭和40年から引用

印通寺港外調査

調  査  項  目

内              容

錨地名

壱岐印通寺港外

錨地の位置及び範囲

海豚鼻北東沖、妻ヶ島南西沖

水 深

2030m

底 質

砂または貝がらまじりの砂

避泊可能な最大船型

5000トン

錨かきの状況

良好

漁具等の設置状況

港口西側に金子漁業の定置網あるも錨泊地ではない

灯浮標・標識ブイ等の設置状況

なし

進入目標

壱岐印通寺港

周囲の地形

南西に海豚鼻、北東に妻ヶ島が位置する

気 象

南から東の風以外は適している

利用実態(特記事項)

当該泊地は、台風避泊時は、5001000総トン級の綱船が56隻避泊する海域となっている。
 過去5000総トン級の貨物船が避泊した事例がある。
 外海に面しているためうねりが入る場合がある。

壱岐分室からの資料

 

芦 辺 港(33°48′ 129°45′)(海図W176, 177)


(概要)
壱岐島東岸の中央部にある港で、港域内には芦辺漁港がある。この港は東方に開いているため、東寄りの風が強吹するときは大きなうねりが入る。
港内の北岸及び南岸の防波堤に囲まれた各船だまりは東寄りの風の強吹時には大波が侵入して危険であるが、それ以外の風には小型船の好避泊地になる。
港奥は遠浅で、谷江川の河口になる。


九州沿岸水路誌105から抜粋


芦辺港の避難港としての適性(小型船向)
当港は壱岐島の東岸にあって、港の入口は東方に開いているため、東寄りの風が強く吹くときは大波がはいるのが、北浜の瀬戸、南浜の芦辺には船だまりがあって、小型漁船(20トン以下)の良い避難港となっている。

避難港の手引き(小型船向)昭和40年から引用