伊万里湾(33°23′N 129°44′E)(海図W166)


(概要)
佐賀・長崎の両県にまたがる大湾で、湾口から湾内にかけて大小多数の島があり、湾形を複雑にしている。
湾は外湾と内湾とに分かれ、内湾の奥に伊万里港がある。
この湾は関門港の西方約80Mにある九州北岸中最良の避泊地である。
伊万里湾に入るには、日比水道、青島水道及び津崎水道の水道のうち、いずれかの水道を通航することになるが、日比水道は水道中央に水深2.2mと5mの険礁、水道南口に水深1.3mと5mの険礁があるので、大型船は通航できない。
また、青島・津崎両水道はともに主水道として夜間も容易に出入航できる。
なお、津崎水道最狭部の北側には養殖施設があるので十分注意する必要がある。
湾西部には松浦港、調川《ツキノカワ》港、今福港(港内は底質泥で錨かきが良く、2,000t前後の船舶が台風等の避泊地として利用している。)があり、沿岸付近には多数の険礁がある。岳崎鼻の周辺及びその南側海域には養殖施設がある。
今福港内は、水深1025m、底質おおむね泥で錨かきは良い。

(潮流)
日比・青島・津崎の3 水道から出入する流れの影響で湾内の潮流は複雑であるが流速は弱い。
上げ潮流は湾奥へ向かって0.10.4kn、下げ潮流は湾口へ向かって0.10.3kn で流れる。
日比水道では、上げ潮流は低潮の1時間50分前から高潮の1時間50分前まで湾奥へ、下げ潮流は高潮の1時間50分前から低潮の1時間50分前まで湾口へ流れ、大潮期の平均最強流速は0.7kn である。
青島水道では、上げ潮流が低潮時から高潮時まで湾奥へ、下げ潮流は高潮時から低潮時まで湾口へ流れ、大潮期の平均最強流速は0.4knである。
津崎水道では、上げ潮流は低潮の1 時間10 分後から高潮の1 時間10 分後まで湾奥へ、下げ潮流は高潮の1 時間10 分後から低潮の1 時間10 分後まで湾口へ流れ、大潮期の平均最強流速は0.6kn である。

九州沿岸水路誌105から抜粋

◎伊万里湾の避難港としての適性(小型船向)
(
伊万里外湾)
佐賀県、長崎県の両県にまたがる深く入りこんだ湾で、大型船(500トン以上)に非常に適した湾である。
東から順に日比水道、青島水道、津埼水道の3湾口がある。
湾内は、外湾と内湾(伊万里港)に分かれ、外湾は長崎県松浦市海岸と福島西海岸、鷹島南岸をもって囲まれ、東西13km、南北74kmの錨地になっている。
底質は泥で「錨かき」は良く、大型船が錨泊するのに適している。

(
伊万里港)
伊万里港で記載。

(
新御厨港)
伊万里外湾の西側にあって、北・西・南が山に囲まれ、東に向け開口している。港内はだいたい穏やかで、特に冬季北西の季節風が強く吹くときの避泊に適している。
水深220メートル、底質泥で「錨かき」は良く、500トン以下の船の避泊に適している。

(
今福港)
伊万里外湾の南東部にあって、東・南・西を山で囲まれ、港の入口は北に開いているが、北方に鷹島があるので、うねりは入らず、北寄りの風が強く吹くときは、波浪が入るくらいで、だいたい穏やかである。
水深は24mで、小型漁船が避泊するのに適している。底質は泥で「錨かき」は良い。

(
高串港)
伊万里外湾の北東部側にあって、東に湾入した港で、港の入口は西に向け開いているが、沖合いは、鷹島、福島で囲まれ、一年中穏やかである。
水深212メートル、底質は泥で「錨かき」も良く、200トン以下の船が避泊するのに適している。

(
星賀港)
日比水道北口の東側にあって、南西に口が開いている港で、三方を山で囲まれ対岸は鷹島でさえぎられて、どの方向の風もよく防ぎ、港内は一年を通じて穏やかである。
水深210メートル、底質は泥で「錨かき」も良く、200トン以下の船の係泊するのに適している。


避難港の手引き(小型船向)昭和39年から引用



伊万里港(33°20′N 129°49′E)(海図W1256)


(概要)
伊万里湾の南西隅に位置し、半島及び福島に囲まれた天然の良港で、港の北西部には滑栄《ナベルバエ》漁港、福島南岸には福島港がある。
港内の中央部は広く、水深も818mあって大型船の好避泊地になる。

(気象)
年間を通じてほとんど風の影響もなく穏やかである。春季の午前、かすみが時々かかることがあるが、濃霧はまれである。

(台風対策)
本港では台風による事故を未然に防止するため伊万里港台風対策委員会を設置し、在港船舶などに対し、台風情報の伝達及び警戒体制、避難、入港制限の勧告・解除等の台風災害防止措置を指導している。

(海象)
港内は外海から波浪の入ることもなく、海・潮流の影響はほとんどない。

(航泊制限)
港内における事故防止のため、九州液化瓦斯福島基地に停泊中の危険物積載船から50m以内の海域に立ち入ることが禁止されている。

(投錨禁止)
名村造船所5 号岸壁(33°20.2′N 129°50.1′E)の前面は投錨禁止区域に指定されている。

(錨地)
大型船の錨地は港内中央部の水深1017mの所がよい。
検疫錨地は白岩鼻の南南西方0.6 M付近に指定されている。


九州沿岸水路誌105から抜粋


◎伊万里港の避難港としての適性(小型船向)
伊万里港の南の奥は、伊万里川、有田川の河口で、水深は浅いが、中央付近は水深818m、底質は泥で、南北の長さ約47km、幅約56kmで外海からの風浪は完全にさえぎられ、一年を通じ穏やかで大小の船の避泊に適している。
また、小型船(500トン以下)は久原沖の水深34mのところが底質泥で「錨かき」も良く錨泊に適している。


避難港の手引き(小型船向)昭和39年から引用