唐 津 湾(33°31′N 130°02′E)(海図W188)


(概要)
仏埼〜女瀬鼻間の約7Mを湾口とし、南北約6M、東西約11Mの湾で、その南西部の隅に唐津港、東側に加布里《カフリ》港がある。
湾内の浜は一般に砂地で、所々に岩が突出し、湾南方の諸山は非常に険しい。
湾南方のほぼ中央にある串埼(高さ65mで樹木が茂っている)から南方約2.5Mの玉島川河口までの間はおおむね岩石浜で礁が続いている。玉島川河口からその西方約3Mの松浦川河口までの間の海岸は虹ノ松原といわれ、白砂青松の地として有名である。
唐津湾口の大型船の常用する航路は、姫島〜神集島間(幅約3.5)である。仏埼〜姫島間の水路(幅約1.2)も険礁はあるが大型船の通航に危険はない。
しかし、神集島〜女瀬《メセ》鼻間の水道は狭く(最狭部の水深5m以上の幅は約400m、南口の中央部に水深4.6mの浅所がある)、定置網があるので、この地方の事情に明るくない船舶は通航を避けたほうがよい。

(潮流)
湾口では下げ潮流は東北東方へ、上げ潮流は西南西方へ流れ、流速1kn を超えることは珍しい。

九州沿岸水路誌105から抜粋

 

唐 津 港(33°31′N 130°02′E)(海図W188)

(概要)
唐津湾の南西隅にある港で、港内西岸に唐房《トウボウ》漁港、東部の高島の南側に高島漁港がある。
大島の東側を東港、西側を西港と呼んでいる。東港は九州電力など比較的新しい工業施設が多く、西港は在来からの港で、主として中・小型船及び漁船が利用しているが、大島西側に液化ガス石油基地がある。
(気象) 夏季は一般に南東の風が多く、冬季には北西又は南西の風が多い。
港内は年間 を通じて比較的静穏であるが、港口が北東に開いているため、北寄りの風が強吹すると大波が港内に侵入し荷役不能(冬季に多く、年間45 日という)又は錨泊困難となる。

(台風対策)
本港では台風による事故を未然に防止するため唐津港台風対策委員会を設置し、在港船舶などに対し、台風情報の伝達及び警戒体制、避難、入港制限の勧告・解除等の台風災害防止措置を指導している。

(海象)
冬季、北東〜北西の季節風が吹くときは、大島〜神集《カシワ》島周辺海域においては、三角波が発生する。

(針路法) 視界が不良でない限り、入港するのは困難でない。

(入港上の注意) 唐津湾内(姫島〜高島を結ぶ線の以東の海域)には、イカ篭漁、カニ篭漁の旗ざおが多数設置されているので注意を要する。

(航泊禁止)
大島西側のほぼ中央にある外防波堤基部から南方の大島ラッフィング係船岸壁(33°28.5′N 129°57.6′E)のほぼ中央に至る間は、一般船舶の航泊が禁止されている。

(航泊制限)
石油類荷役中の事故防止のため、一般船舶は西港大島ドルフィン岸壁北側及び大島1 号ドルフィン岸壁前面に石油類荷役船舶が停泊している間は、同船舶から30m以内の海域に立ち入ることが禁止されている。
なお、同岸壁に石油類荷役船舶が停泊しているときは、上記航泊制限区域の境界線上に浮標が2個以上設置される。

(錨地)
西港内は水深710m、底質細砂及び炭粉混じりの硬い泥で錨かきが良く、相賀《オウカ》埼によって多少北寄りの風を防ぐことができる。
東港は水深79m、底質細砂で錨かきが良く、北西風時には西港よりも錨泊に適するが、台風時の避難錨地とはなり得ない。
検疫錨地は大島北端の北西方0.7M付近に指定されている。


一般船舶の錨地は

【西港錨地(概位 33°28.8′N 129°56.8′E)
唐津港大島灯台(33°29.0′N 129°57.8′E)から256°1,500 メートルの点を中心として半径100メートルの海面

【東港錨地(概位 33°28.8′N 129°58.6′E)
唐津港大島灯台から102°1300 メートルの点を中心として半径200 メートルの海面がある。


九州沿岸水路誌105から抜粋


◎唐津港の避難港としての適性(小型船向)
当港は唐津湾の南西部にあって、本陸と大島とを結ぶ埋立地により東西両港に分かれ、東部を「東港」、西部を「西港」という。
西港は北西を相賀埼に、北東を大島に、背後の陸地は山続きによって囲まれ、一年を通じてあらゆる方向の風を防ぎ、港内は穏やかである。底質は細砂と炭粉まじりの堅いどろで「錨かき」は良く、避難港として適している。
しかし、台風や季節風によって北東の風が強く吹く(15メートル以上)ときは、風浪がはいって錨泊が困難になるときもある。
なお、避泊できる船は500トン以上20隻、500トン以下150隻、機帆船200隻、漁船100隻くらいである。


避難港の手引き(小型船向)昭和39年から引用

 

 

加布里港(33°32′N 130°08′E)(海図W188)


(概要)
唐津湾東部にある港で、港域内には船越、加布里及び深江の各漁港がある。
この港は、南西〜北西風の強吹時には利用できないが、北寄りの風のときは錨地となる。

(気象)
春季は北東及び北寄りの風が強吹して、うねりの入ることが多い。

(
錨地)
鷺ノ首(33°32.8′N 130°07.0′E)と立石埼(33°32.9′N 130°08.5′E)とを結ぶ線の南側で、水深79m、底質泥砂の所がよい。

九州沿岸水路誌105から抜粋


◎加布里港の避難港としての適性(小型船向)
唐津湾東部にあって、鷺ノ首(さぎのくび)を港の入口の北端とし、配埼(はいざき)を南端とする。
港の入口の幅は約35km、湾入約5kmで、港内の北浜の中央から立石埼が突き出て、内港になっている。
地形上北西〜南西の風浪は十分に避けることができないので、春秋北寄りの風が強く吹くとき、鷺ノ首より立石埼までの船越南側半月状の湾に5003000トン級の船が年間約30隻ぐらい利用しているが、台風のときは利用しない。
底質は泥または泥まじりの砂で、「錨かき」は良くない。
30
トン以下の小型漁船は、船越、加布里、深江の3漁港を利用でき、どの方向の風に対しても安全である。


避難港の手引き(小型船向)昭和39年から引用